拝啓

まだ純粋無垢だった15歳の私よ、信じられるか。

go!go!vanillasが、今夜武道館の舞台に立ったよ。

 

武道館の天井に星空みたいに照明が瞬いて、4人がセンターステージに飛び出してきて、聴き馴染みのあるドラムロールと共にオリエントが鳴り響くんだ。シングルバージョンじゃなくて、Magic Numberバージョンね。1曲目からこんなのずるいよな。人が泣く場面で自分ばっかり泣けなくて、自分は感受性が薄いんじゃないかと悩んでいた頃が馬鹿馬鹿しいぐらいに、初っ端からぼろぼろと泣いてしまったよ。

 

15歳の夜に、ラジオから流れてきたマジックに一瞬で心を掴まれて、どうにか聞き取ったバンド名を「変な名前だな」なんて思いながら慌ててメモ帳に書き殴った、あの夜が全ての始まりだった。電気を落とした暗い部屋が、一気にぱっと明るくなったような、あんな気持ちは初めてだった。思えば、あれからずっとロックンロールの魔法にかけられている。

 

初めてライブハウスに足を踏み入れたのも、バニラズがきっかけだった。高1の3月のKameleon Lightsツアー仙台公演。ろくにステージは見えないし、知らない人にもみくちゃにされるし、暑いし、疲れるし、でも、それ以上に、大好きな音楽が爆音で鳴り響くあの空間に魅せられていた。汗止まんないしまるでサウナだな、なんて思ってたけど、まさか5年後にボーカルが「武道館を日本一大きなサウナルームにしよう」なんて言い出すとは思わないよな。

 

バニラズを見るためにいろんな土地にも行ったね。どうしても見たいライブに限って、大抵テストや課題の直前だった。だから、事あるごとに無茶なスケジュールで遠征をした記憶がある。お陰で1人でどこへでも行けるような人間になってしまった。普段はそんな事ないくせに、好きなもののことになると突発的に無茶しちゃう自分の性格、実は結構気に入ってる部分だったりするよ。

 

気づいたらいろんな場所にたくさん友達ができていた。住んでるところも年齢もバラバラで、名前も顔も知らないのに3、4年もの付き合いになるような友達がさ、ようやく今日大集結したんだよ。夢みたいな話だね。いつか、何年か経ってみんな成人した時にまたこんな機会が訪れたら、その時にはお酒でも飲みながら青春を懐古して語り明かしましょう。

 

バニラズと出会ってからもう6年も経ったらしい。いろんなことがあったよな。私の人生も、バニラズも。嬉しいことも悲しいことも。でも、なんだかんだバニラズの曲たちはずっと聴き続けていた。どの曲を聴いても思い出が湧いてくる。いや、流石にそこまでは言い過ぎだろうか。でも確かに、バニラズの音楽は私の人生の主題歌として鳴り続けている。そんなことを言ったら烏滸がましいかもしれないけど、今夜ぐらいは許されるだろう。

 

6年前は、いや、去年の今頃ですら、未来にこんなにも不安や窮屈さやもどかしさが溢れるようになってしまうとは思ってもいなかった。左右前後に間隔が空いたライブも、歓声が上げられないライブも、あの曲やあの曲を一緒に歌えないライブも、微塵も想像していなかった。今日なんて、私がいたブロックの同じ列に誰もいなかったんだよ。流石にそこまで空けられると寂しい。そんな偶然はさておき、思うように声を上げられないライブにはどうしてももどかしさを感じてしまうけど、今夜聴いたおはようカルチャーは、メンバー4人だけが歌っているはずなのになぜかそんな気がしなかったんだよな。牧さんがMCでも言ってたけど、心で歌っていた思いが響いていたんだろうか。でもさ、やっぱ大きい会場でみんなで歌うおはカルがまた聴きたいよな。めちゃくちゃ好きなんだもん、四方八方から声が溢れてくるようなあの瞬間。いつか、何年後かわからないけど、次は満員の武道館で再開しような。それまでは生きるから。生きてれば必ず会えるから。

 

あんなにも夢見ていた武道館が、ついに終わってしまったのか。事あるごとに涙が溢れて、それでいて笑みも溢れてしまうような、幸せな空間だったな。この夜で、私の青春は一区切りついたような気分です。15歳の少女だった私は、気づけばすっかり成人して、もう21歳にまでなってしまったよ。私にロックンロールを教えてくれてありがとう。紛れもなく私の青春だったよ、go!go!vanillas

 

サクッと書いて寝るつもりだったのに、気づけばこんなにも長々と書いてしまった。もうあと2時間ほどで仙台に着いてしまう。現実に戻ってしまうな。生きていればきっとまたこんな夜が来るはずなので、それまではほどほどに頑張って生きていようかな。