ハッピーエンド

「遠征は18歳になってから」という言いつけを律儀に守り、18歳になって10日後に満を辞して見に行ったのが2017年の未確認フェスだった。SUNNY CAR WASHの出番はラスト。ゲストバンドのミセスを最前で見るために朝から陣取ってたライブキッズにダメ元で声を掛けて、サニカーの出番の間だけ譲ってもらった新木場スタジオコーストの最前列。昨日の夜、眠る前にあの日の光景を思い返していた。「全部ぶっ壊しに来た!10代最後の夏、全部、全部ぶっ壊しに来た!」と叫び、文字通り爆音を掻き鳴らすライブが痛快で、このまま何もかもひっくり返してくれ、と思えた夜だった。その日のライブ終わりに物販で買い、メンバー3人にサインをもらったTシャツを着て、今夜ラストライブを見に行く。

 

というところまで、通行止めによる経路変更で遅延した高速バスの中で書き上げ、ようやく辿り着いたZepp DiverCity。サイン入りの初期Tシャツに初期パーカーを纏ったここぞとばかりの古参ムーブでも、座席は1階席の後ろから3列目なのは皮肉だ。前に立つお客さんごと見れるライブもそれはそれで乙だと思うのは強がりだろうか。 

 

開演前のゲストMCとして登場したとーやま校長。校長が代わったとしても、私にとっての校長はとーやま校長だけ。4年前の夏、新木場でサニカーを見た身からすればこんなに胸の熱くなる人選はないのに、会場はイマイチ沸いてなくて少し悲しくなってしまった。声さえ出せればなあ。もう少しだけ前の席だったらなあ。 

 

開演時間を少し過ぎた頃、会場SEの音量が少し上がって登場する3人。4年前の夏、初めて見たライブと同じ構成。演奏前、3人が順に目を合わせ、手を組み合う姿を見て、「ああそうだ、この光景だった」と、3年前に仙台で何度も見たライブを途端に思い出して一気に涙が込み上げて来てしまった。こんなに早く泣くなんて思ってなかったのにな。

 

3年前の春休み、仙台で毎月のようにライブをやっていてくれた頃、ステージの上に寝転んで転げ回って演奏したり、マイクに唇ぶつけて血流しながら歌ったり、爆音のノイズを残しながら袖に履けて行ったり、とにかく無茶苦茶なライブをしていた記憶ばかりあるのに、今日のMCはずっと穏やかで、マイクの前にきちんと立って歌う姿に4年も経てばそりゃ少しは丸くなってしまうよなあと何処か切なくなってしまったり。3人も、私も、それだけ大人になってしまったんだろうなと思いを馳せていた。でも、本編ラストにやったティーンエイジブルースで、とにかく無茶苦茶にアダムさんが叫んでいるのが聴こえて、これだよ、これじゃん!と思ってまた泣けてきてしまった。こんなに泣くなんて思ってなかったんだよ。本当に。

 

一瞬だった。事実、1時間半で全て終わってしまった。ラストライブなんだからさ、ダブルアンコールぐらいまでやってくれても良いと思うじゃんか。本編で持ち曲をほとんど全部やってしまって、アンコールで披露した3曲はどれも2度目の演奏。そんなところも愛おしい。本当に一瞬だった。初めて見た4年前のあの夜から、全部幻だったのかもしれない、そんな終わり方すらサニカーらしいと思えるよ。

 

全部、全部幻みたいにあっという間に終わってしまった。何もかもぶっ壊して、ひっくり返してくれよと願っていた。未練もなく呆気なく終わるバンドの姿というのは、何故あんなにも美しいのだろうか。18歳の私へ、あなたの信じたバンドは、最後まで間違いなく格好良かったからな。誰よりも美しい終わりだったからな。

 

どうか、どうかいつかまた、何年先何十年先でも、その才能を殺さずに、また新たな音楽を聴ける日が訪れますように。ベロベロに酔っ払った回らない頭でも、アダムさんの曲をまた聴ける日を夢見て、拙いライブレポートを終わろうと思います。最高に嬉しくて、最高に楽しくて、それでも最高に悲しくて寂しいライブ納めでした。来年も、愛してやまない音楽を好きなだけ浴びられますように。みんな、良いお年を。