卒業旅行備忘録

卒業旅行、と位置付けていいのかわからないほど慎ましく、都合の合う数人だけで温泉に泊まって、その夜の出来事を酔いに任せたあやふやな記憶にはしたくないな、と思ったので少し書き留めておくことにする。

ご飯もお風呂も済ませてさあ夜はここからだという時間に、ひとつの部屋にみんな集まり酒盛りをしながら、カタンをして、マリオカートをして、マリオパーティをして、またカタンをして、眠気で脱落せずに残った数人で深夜4時ごろから始まった、7年を振り返って今だから話せること、みたいな流れ。深夜に酔っ払った学生男女が数人いたら恋愛の話が始まるのは至極当然で、お互いに過去の恋愛について話し始めたりしていた。そもそも私は人の恋愛話を聞くことに対しては抵抗は全くなくて、ただ、その輪の中に入っていたら自分にも順番が回ってくる可能性がどう考えても高くて、そうなった時に一体何を話してどうかわせばいいのかがわからないからそういった話題に興味がない素振りをして避けて過ごしていた。

でも今日は、自分のターンが来て、もし話せそうだったら自分の恋愛指向について話そうかなと、相当酔った頭の片隅で冷静になって考えていたりした。こんなに腹を割って話せるのなんてきっと卒業前最後だし、誰にも自己開示できずに過ごすのはやはり寂しいし、もう卒業だし、卒業式が終わったら次いつ会うかもわからないし、きっとこの人たちなら大丈夫だろうし、などと頭をぐるぐるさせて、結果的にやっぱり話しておきたいなという気持ちになったので、その時その場にいた同級生3人にカミングアウトをした。話せそうだし話そうと心を決めていても、アルコールの勢いを借りていても、いざ口に出した後の相手の反応が至って穏やかであっても、やっぱり話す瞬間はどうにも震えてしまうな。

きっと信頼の置ける相手だから話そうとは決めたもの の、いざ伝えると自分の不安が全くの杞憂だったほどにフラットに受け止めてもらえて、ああ、この人たちと学生最後まで過ごせて良かったな、と思えた。話した3人のうち1人は7年間のうちの後ろ2年間で一緒だっただけの留学生だけど、「自分も今の相手の前は同性を好きだったからバイセクシャルかもしれない」とあまりに自然に言われたり、7年間丸ごと同じクラスだった友人からは、「他のセクシャルは周りにいたけどデミは初めて聞いた」とまるで当たり前の存在のように会話が進んでいったことが嬉しい驚きだった。自分の中でとてつもなく重荷だと思って頑張って背負おうとしていたものは、案外軽々と存在を認識してくれる人が実は周りにもいるし、もしかしたらこの重さも少しずつ軽くしていけるのかもしれないと思った。

こんな風に、この人ならきっと大丈夫だろう、と信頼できる人に少しずつ打ち明けたりしていけば、このいろんな要素でがんじがらめの生きづらさも少しは楽になったりするのかな。あとは、今日打ち明けた人たちには、実は案外近くにこういう人もいるんだなーって感覚が少しは残ってたりしたら嬉しいかもな。

この学校入った当初の自分、マジでクソ真面目人間すぎてお堅く留まった絡みづらい野郎だったに違いないけど、年を重ねるにつれて色んなことへのモチベは下がり、それと同時に色んな人と仲良くできるようになった気がする。人としての面白みは増したかな。特に最後の2年間を一緒に過ごした居残り組の同級生たちのこと、こんなに大好きになると思ってなかったから卒業目前なのが本当に寂しいんだよ。卒業式泣いちゃいそうだね。